25冊目 奇跡の朗読教室 人生を変えた21の話

朗読を通して作品と向き合うことは、自分と向き合うことでした。


本を開いて六行目、おや、と思った。


“自分の仕事にそれなりに誇りを持ち、充実した日々を過ごしていた2011年3月、東日本大震災が発生。それまで人の役に立つ仕事だと思い込んでいた私のスキルが、こういう事態の下ではなんの役にも立たないことに気づき、衝撃を受けたのです。”


とあった。以前紹介した吉満明子さんの『しずけさとユーモアを』にもセンジュ出版設立の経緯として、3.11が契機の1つだったと挙げられていた。既視感の理由がここにある。


3.11を契機にこの本の著者は、それまでリポーター、ナレーション、話し方講師、司会業などを行ってきたが、声の仕事を通して人々を元気づける手法として、朗読教室を始めることを思い立った。


なんだか吉満さんとよく似ている。吉満さんは震災を契機に、「人をバカにしない本作り・人を信じる本作り」をするため、センジュ出版を設立した。

この本の著者、斉藤ゆき子さんは、「来るだけでポジティブになれて、安心感と楽しさに満ちあふれる」朗読教室にしようと思い立ち、教室を開いた。


この本は朗読の仕方ではなく、朗読を通して人生をより輝かせるに至った21人の物語である。




いつものように読書のすすめを訪れたときに、小川さんから「この本こそ、自己啓発なんですよ!」と本の買い付け先の人から紹介されたというこの本を、勧められた。


本好きには、だいたい幼少期に誰かから読み聞かせをして貰った事がある人が多いかと思う。

それ故に朗読とは、基本的に絵本とか児童書のイメージがあった。


先日も長期間の自粛に伴い声優の悠木碧さんが子供向けに『手袋を買いに』をボランティアで読んでくれていた。自分の朗読へのイメージはその程度であったが、この本を読んで、朗読の題材は小説や文学作品など、多岐にわたることを知った。


詩や文学、児童書など様々な作品の朗読に向き合う、老若男女様々な生徒達。決して若者ばかりではない。人生も半ばにさしかかり、その後の人生を豊かにする相棒の1つとして、もしくは自信のコンプレックスや問題点を解決するための一助として、朗読教室の門を敲いた人たちである。


そんな人たち、自信の思考も価値観も固まってしまっているかのように見える人達が、相手を慮ることの権化とも言える、朗読という行為を通して、絡まった糸が解けるように、変わっていく。


どんな勉強会やセミナーを受講しても、その人間の基本的な部分は揺るがないことが多い。変化は一過性のものである。マイブーム程度の作用しか持ち得ない。


しかし、この本の通りならば、人は何歳だって変わることが出来る。そこに希望を感じる。


読書は基本的に自分のためにする。小川さんによれば、人に勧めるために読む、という奥義があるが、自分はまだ会得できていない。


ただ、朗読は紛れもなく相手のため、聴き手のために為される。自分のために行うなら、それは音読になる。


表情を変えると声が変わる。声に気持を乗せる。それが伝われば、人が自分を認めてくれる。


なるほど、確かにこれは何よりの自己啓発だ。しかも結果が出る。


「自己啓発」という言葉は現在、余り良い意味では使われない。意欲はあっても結果として表れないものの様に扱われる。


ただ、この本のように、朗読を学ぶことでなら、人は変われるかも知れない。


自分を差し置いて、目の前の相手のことに意識を集中する。そこには、凄いエネルギーが注がれるだろう事は、想像に難くないからである。



cf)昔出会った、朗読に関する書籍

現在絶版ですが

天国の本屋(新潮文庫)

主人公は突然天国の本屋でアルバイトすることになる。その本屋では店員が読み聞かせをすることになっていて・・・?

っていう感じの本だったと思います。読んだの小学生とかだから内容はうろ覚えですが、良い本でした。


花もて語れ (ビッグコミックスピリッツ)

朗読漫画。大学時代友人に勧められてハマった。

引っ込み思案な主人公が、朗読に出会ってその魅力に惹かれていき・・・?

という感じだったかと記憶しています。

全巻は読んでいないのですが、結構本格的だったと思います。

松浦信孝の読書帳

本を読んで考えたことを中心に好き勝手書いてます。

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