クリエイターだけでもアーティストだけでもなく、人類にとっての「つくる」を考える
好きなタイプの本だ。
建築家でありながら、ドローイングを行うアーティストとしての側面も持つ著者が、多様な表現者たちと繰り広げた五回分の対談がそのまま本になっている。
五感と思考がテーマで、各々の観点から「つくる」に対して交わされる対話が、知性と感性の世界を行き来する。
この本を読みはじめた当初、著者の光嶋さんが偶々銀座で個展をやっていたので、実際にお会いする機会を得た。気さくで明るい方であった。
しかし実際に会って話した感覚とはやや異なり、本の中の対談では、光嶋さんのコメントは重厚なインテリジェンスに裏打ちされていることがよくわかり、圧倒される。
難しい本ではない、けれど一読では何かを捉えたという感覚がなく、読み終えた今も消化不良の感が続く。
それは自分に「つくる」という感覚が今のところ希薄であり、この本が投げかけてくる問いに相当するものを自分の中から発掘できていないからかもしれない。
道具をつくる、料理をつくる、文章をつくる、音楽をつくる、関係性をつくる、仕組みをつくる。
これは、読む人それぞれに、生業としての「つくる」を問いかける本であり、その対象はクリエイターやアーティストに留まらない。
生きる限り人は何かを「つくる」のだし、その一方で不要になったり時代が変わったりすれば「こわす」や「すてる」も考えるようになる。
そういた生きていく上での営みのひとつとして、「つくる」ことと向き合うきっかけになった本だった。
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