この本を買ったのは恐らく「読書のすすめ」、毎度お馴染み東京都篠崎駅にある僕のパワースポットだ。
出会ったのは2012年〜2013年くらいだろうか。半分くらい読みかけて、なぜか本棚に刺さったままであった。
当時付き合っていた人が醸造学科だったのもあり、興味をひかれたのだと思う。自分にはどうやら、そういう所がある。
だから昨年末から今年の頭にかけて何故か発酵に惹かれ始めたときに、この本の存在をようやく思い出し、前回紹介した発酵文化人類学で一気にハードルが下がり、FBの橋田さんからのコメントで背中を押され、やっと再読を始めた。
読んでびっくりした、この本こそ僕が求めていた本当に「生きる」って事ではないか。
一時期よく読んでいた、執行草舟氏の本には何度も「菌食」というワードが出てくる。人間が本当に必要としているのは食物よりも、そこに存在する細菌、微生物の働きなのだと読む度感化されていた。でも何を食べたらいいのか、ずっとピンときていなかった。
その「問い」という形の空白に、「発酵」は最良のピースとしてはまり込んだ。
この本の著者も各場面で問いを投げかける。
業界の常識への問い、既存の経済システムへの問い、食生活への問い、人間が線を引いた細菌の世界への問い、病への問い、生命への問い
人間が「人為」で改変してきた事のメリットとデメリットがどうやら裏返り始めた、そんな空気を感じる今こそ、この本のメッセージが刺さる。
そのどれもが、自分の中の声ととてもよく共鳴した。
そうだよ、そういうこと考えたかったんだよと。
でもこれは、寝かせて正解な本だった。2012年当時の僕には、この本のメッセージは響かなかった。
数多の本や人との出会いの中で、少しずつ自分を壊し、経験を元に再構築した今の自分でなければ受け止められなかっただろう話。常識に疑いのライトを向ける、少し不思議な人生訓。
残念ながらこの著者は僕がこの本を寝かせている間にこの世から旅立ってしまったが、彼が残した寺田本家という酒蔵の商品達は残っているし、この本や寺田本家を通して友人達との縁も深まっている。
人も本も、最良のタイミングで出会うことを再確認した一冊。
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