19冊目 バカともつき合って

自分は、「雰囲気」という世の中を包むこの不気味な暗雲に華麗に反逆していきたいと思った。


この本は『バカとつき合うな』堀江貴文・西野亮廣著 の公式便乗本らしい。企画段階で西野氏に了承を得て、堀江氏も承諾、出版社もOKを出したという驚異の根回しの良さ。


元ネタの本は残念ながら読んでいない。


便乗本、というくらいだから、きっと中身も色物だろうと疑ってしまっていた。


しかし読んで唸った。内容も濃く、著者のお二人が振り返る苦悩の経験が読む者を救う。


序文に出てくる「異常識」という概念がまず秀逸である。人は通常、常識/非常識という二元論で自分と合わない他者を切り捨ててしまいがちだ。最近の自分もこの傾向があった。

しかしそれは非常識では無く、「異常識」あくまで自分とは異なる価値基準で生きる異邦人のような者だ、許容すれば良いではないか、という提案が為される。


異常識を許容するという「あそび」こそが日本を真に成熟した社会へと導くキーワードなのだと思う。


数多のビジネス書にすがり、それでもホリエモンや西野さんのようにスマートには生きられない「あなた」にこの本は手を差し伸べる。それは自分にとってもそうだ。


この本で言う「バカ」とは勉強が出来ないという意味では無く、「与えられたレールをまっすぐ歩けない人」を意味する。現状の社会に生きづらさを抱えた人のことである。


前半はマキタスポーツ氏が自身の人生を振り返り、引きこもり時代の話や、引きこもり克服後も、自分の部屋に潔癖症のようにこだわりを持ち、人を遠ざけていた時代の話が語られる。


氏は自分の領域を汚す者は殺してしまえ、とまで思ったという異常な精神状態を、自分で気付いて、治した。


自分とは異なる他者を受け入れることで、自分がアップデートされていく感覚を得たという。


この事を氏は「編集力」と呼んでいる。人の影響を受け、得たものを自分なりに編み上げる。それには材料として多様な出会いが必要だ。人間との出会いと対話が次の扉を開く。価値観が違ったり、文化が違う方がその刺激は大きい。


第二次世界大戦当時と今の時代で違うことを考えたときに、アメリカ合衆国を始めとする海外の国々がどんなところで、どんな人が住んでいるのか、普通の人でもだいたいは知っている。行ったことがあったり、他国に友達がいる人もいる。


この事が何を意味するのか。自分は世界から未知が激減したと考える。


まだまだ知らないことは沢山あるが、もの凄いスピードで世界は発掘されつつある。


台湾の人気ドリンクが、異常なまでに普及する時代


ちょっとお金があれば、海外旅行に行ける時代


海の向こうの病気が、あっという間に拡散する時代


悪いことばかりでは無い。他人ではなくなれば、争いは起きにくくなる。


顔が見えれば、問題解決に向けて検討する手段も変わる。


世界を発掘し尽くした後にあるもの。それが真の平和なんじゃないかと思う。





後半は西田二朗氏の文章である。


とてもクリエイティブで、でも少し不安になる多動性を持った子供時代。常識に囚われず、自由に考え、行動する様は日本の学校では異常者として映っただろう。


大人になってもその傾向は脱していないようだが、それを受け入れてくれる職場、そんな自分を生かす働き方を見出した。


自分が組織に得をさせる存在になる「サラリーマン2.0」の発想


出会いが増えてくるような振る舞い方


できないことの乗り越え方


どれも秀逸な教えばかり。テレビマンと呼ばれる人種にこんな人がいたなんて、と正直見直した。




「バカ」を受け入れることは自分の内なるバカを解放することにも繋がる。


それは巡り巡って、自分でも気付かなかったまだ見ぬ自分に出会うこと。


その中で天命に気付くことだって、きっと、あると思う。


自分の殻に引きこもらず、世界を拡張する。


その第一歩に、この本はなるだろう。


↓NJという名前でミュージシャンデビューした西田次郎さんの楽曲

ロコの星=ローカルスター

元気の出る、良い曲です。もうカラオケでも歌えます。

P.S. ちなみにこの本の編集者は、おなじみセンジュ出版の吉満明子さんだ。
中身の濃さと本の根底に流れる優しさ、流石である。

松浦信孝の読書帳

本を読んで考えたことを中心に好き勝手書いてます。

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