星野源という人の、音楽以外の部分を初めて知った。
単行本の時代から気になっていたタイトルではあったが、星野源が更に有名になり、文庫化したタイミングもあって手に取ってみた。
読みやすく、引き込まれる。
影響を受けた音楽、漫画やアニメへの愛が語られ、創作の苦労話やドラマ撮影の裏側など、多方面で活躍する、星野源の日常を覗き見ることが出来る。
しかし最も衝撃を受けたのは、くも膜下出血の発症、手術、入院中の話及び、再発し再度手術するまでを書いた後半の2編である。
大成した人はどこかで命を脅かす大病をしていることが多い。でもこの若さでその経験をしてしまう人はそれほど多くはない。
四六時中続く痛み、入院生活の悲哀、相当苦しかっただろうし、本当に相当苦しそうな記述も見られるのだが、読み手を意識しての文章のためか、常にどこか明るい希望の光を感じる。
読み手を暗くさせない書き方をしてくれている。
奇しくも「地獄でなぜ悪い」という曲が予言してしまった自らの状態を冷静に振り返り、その姿は読み手に勇気すら与える。
その姿が、今まさに病院内で見ている風景に重なり、患者視点とはかくあるものかと自分の及ばない世界を教えてくれる。
死んでから地獄があるのでは無いのだ、我々が生きている世界こそ地獄があるのだと
世間に評価されながらも、どっしりとした芯を持ったミュージシャンの存在が頼もしく感じる。
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