これほどまでに、心が自由になる感覚を得られる本を、僕は今まで読んだことがなかった。
エネルギッシュで破天荒、でもどこか大人として一生懸命でまっすぐな母の元に生まれ育った漫画家、ヤマザキマリ
北海道で野生児のように育ちながらも、小学生にして幼い妹の面倒を母の代わりに見る幼少期を過ごし、14歳の頃には一人でヨーロッパへ送り出されるという試練の日々を過ごす。
17歳で今度は絵画の勉強のためにこれまた一人でイタリア留学
『フランダースの犬』のような極貧の日々の中、仲間達と知性と教養を高める日々を送る。
果てにはイタリアで出来た詩人の恋人の子を、別れた後に一人で産んで、漫画家デビュー。
賞金を旅費とし、子連れで帰国
そのうち出会った12歳下の男と結婚、シリアに移り住む
かなり要約していますが、ざっとこういう人生の人の本
漫画家さんですが、正統派の芸術の勉強をしていたり、三島由紀夫や安部公房、谷崎潤一郎など日本の文学や、イタリアの映画、西洋の文学などその文章からは教養の風が匂い立つ。
札響(札幌交響楽団)のヴィオラ奏者を母に持つヤマザキさん、小さな頃からクラシックを聴いて育っている位だから、人生は破天荒でもその裏にはきちんとした文化の背骨があるのだろう。
僕の身の回りでは、これからの令和は「苦しみの時代」になるだろう、と言われている。
その苦しみを人生の機微として味わう秘訣が、この本には詰まっている。
現代の価値観を疑う、本質的な思考
行動規範を支える、人類が積み重ねてきた教養の巨人的視点
まさに女版執行草舟
読んで元気が出る本である。
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