福岡に、大石香さんという、ワーゲンバスで本を売り歩く、移動書店るーこぼん、という一人書店を営む人がいる。
とても素敵な方で、生活に根ざした、地に足のついた選書がとても魅力的な方で、先日ふと思い立ち注文をさせていただいた。
その中の一冊が、これだ。
街中を歩いていて出会う木々を、森の案内人である著者が一種類ずつ、友達のように紹介してくれるとっても楽しい本だ。
僕は先日まで、4月からの3ヶ月間を横浜の東戸塚で研修を行いながら、週四日間、束の間の横浜暮らしをしていた。(横浜と一口に言っても坂と山ばかりの静かなところだった。)
そこでの暮らしで自分がしていたのは、
日々自炊をする
味噌汁の出汁を自分でとる
花の咲いたドクダミを敷地内で採集してドクダミ茶&ドクダミチンキ作り
梅シロップ仕込み
などなど…
仕事の傍ら、僕の興味は生活の中の、「今そこにある豊かさ」に完全にフォーカスしていた。
(ちゃんと本業の勉強もしてきた)
その中でも自分の中で特に印象に残っているのが
敷地内の桑の実を採集して、コンブチャ(昆布茶とは全く別物の発酵飲料、紅茶きのことも言う)
を仕込んだことだった。
旬の桑の実で仕込んだコンブチャは、とてもとてもおいしく、原始の感覚が呼び覚まされるようだった。
そこでこの本に出会った。この本は森の中を紹介する本ではない。
都市の片隅に息づく、アスファルトの荒地を森に変えて行く可能性のある木々を紹介する本なのである。
この本で出会った木や草はたくさんある
桐、赤芽柏、楠、神樹、葛
そして、山桑
上に記した桑の実を実らせる桑の木である。
この桑の木、葉の形が割れていたり丸かったりする。理由はネットで調べてもわからなかったのだが、この本にはちゃんと書いてあった。
若木のうちは葉に巡る空気の流れを早くするため、葉が割れており、充分育つと丸い葉になる、と。
風を操り自身の成長を加速する木、それが山桑である。
なんとも言えない巡り合わせを感じて、嬉しくなった。
昨年からのヨガのプラクティスの中で自分がたどり着いた自分の根源も、自然や樹木につながるものである。
最近何度も、小さい頃好きでたまらなかった母方の祖父母の庭を思い出す。
大きな石がゴロゴロ転がり、いろんな木が生えていた小宇宙のような庭
子供心に、あれは自分にとっての森だった。
いまでも、心の力を取り戻す時、自分は心の中のあの森に帰る。
そんな森の力は、街中であろうと、都会であろうとどこだって自分のそばにいてくれる。
そういったことに気づかせてくれて、自分の世界が一変したのが、この一冊だった。
今では樹木や草花が、かけがえのない仲間のように感じる。
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